悔しさをバネに学生起業、自分らしく生きる道を切り拓く 株式会社ショートムービー 米田 侑弘さん

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今回は、札幌の企業の「TikTok運用」を代行している株式会社ショートムービーの代表 米田 侑弘(よねた ゆきひろ)さんにお話を伺いました。

米田さんは大学在学中だった2年前に起業。その強い原動力になったのは、過去の「悔しい経験」でした。

企業と直接顔を合わせ、コミュニケーションを重ねる中で、その情熱と圧倒的な行動量を武器に“自分が誇れる自分”を手に入れました

米田さんがどのようにして道を切り拓き、今、何を目指しているのか。今回はその挑戦と未来を深堀りしていきます。

(取材日:2024年9月・インタビュー:濱内勇一、原くみこ・文:掛橋愛理)

ロカロウ
米田さんが札幌を拠点に活動している理由も深堀りしてきたよ
株式会社ショートムービー 代表取締役 米田 侑弘(よねた ゆきひろ)
北海道札幌市出身。北海道情報大学在学中に、TikTok運用を代行する株式会社ショートムービーを設立。「企業の良さ・強みはショート動画で伝えられる」という想いのもと、札幌を拠点に顧客の課題解決につながるショート動画を企画立案、制作し、運用代行を行う。

学生起業、そして同時に法人化

原:米田さんは学生の頃に起業されたんですね。

米田:はい、2年前、大学4年生で起業しました。経営の師匠となる方に出会ってアドバイスを受けたこともあり、事業を立ち上げるなら法人化も一緒に、と会社を設立しました。

濱内:法人化が必須ではない業種だと個人事業のままで長年やってる人も多い中で、米田さんが最初から法人で始めたというのが驚きました。

米田:今振り返ると、あの時は、もう後がないという気持ちで、退路を断って覚悟を決めるみたいな感じでした。

原:事業を立ち上げるときから、ある程度、お客様の依頼があったのでしょうか?

米田:いいえ、そうではないんです。知人から頼まれたりして動画編集はしていたんですが、ショート動画の運用代行の実績はありませんでした。でもこれからショート動画が来ると確信していたので、会社設立から最初の半年間はひたすらTikTokの自社アカウントを運用しながら、成果を出すにはどうしたら良いか、トライ&エラーを重ねていました。

原:本当に「やるぞ」って決めて始めたんですね。

米田:こういうパターンの起業事例って少ないでしょうか…(苦笑)。ショート動画って独特で、動画編集のスキルがあるだけでは成果を出すのは難しくて上手くいかない投稿の改善点を検証しまくっていました。

原:検証を繰り返して改善していくと成果が出る、そこが面白かったんですか?

米田:そうですね、面白く感じてたから続いた気がします。あと、周囲を見回してみても、ショート動画に興味はあっても詳しい人は少ないと感じていて、ここの困りごとを解決するサービスは求められるに違いないという直感もありました。

原 :では創業してからしばらくは、サービスの開発をしていた感じですね。

米田:はい、多い時で10くらいのアカウントの運用に挑戦していました。

原:それは案件ではなく、あくまでも再現性などをテストするための自主的な検証として?

米田 :そうです。

原 :どれくらいの期間で成果が出始めましたか?

米田:検証を始めて4か月目くらいで、自社で投稿したショート動画の再生数が、アカウント全部の合計で2,000万回くらいになりました。そのあたりで再生数が上がるコツみたいなものを体感して再現性も確認できたので、それからは交流会などに出かけて営業し始め、サービスとして対価をいただくようになりました。

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複数のアカウントを運用するだけでも大変なのに努力量がすごすぎる!

原 :SNS運用代行業の界隈では、「自分のアカウントが伸びたから、この仕事やってみよう」という流れが多いと思うんです。それとはまた違いますよね。戦略的に動かれて、それが事業として上手くいっている。

濱内 :半年間、とことんご自身で検証し尽くされているから説得力が違いますよね。

原:ただ気になったのは、創業から半年間は売上がなく大変だったのではないかなと。

米田:それでいうと、起業当時、学生だったことで良いことがたくさんあった気がします。会社を設立したのは卒業する半年くらい前でしたが、在学中はこれまでアルバイトで貯めてきたお金や奨学金で何とか生きていました(笑)。

学生でいられるのもあと数か月とわかっていたので、その間にどうにか軌道に乗せなきゃいけないという気持ちもあって、集中して頑張れたのもあります。

濱内:この話は学生起業をこれから検討している方にとってすごくいいですね。モデル的なお話であり、学生起業を選ぶメリットでもあるかなと。

“何者”かになるために地元札幌で起業

原:米田さんはいま札幌を拠点にご活躍されていますが、札幌で事業をしたいという想いは10代の頃からあったのですか?

米田:いいえ、“結果的”に札幌になった、という感じです。僕、実は3浪してようやく大学に入っていて、本当は進学で上京して東京に住んでみたいとずっと思っていたんです。

原:東京へ行きたい!という夢があったんですね。

米田:はい、中学の終わりくらいからずっと東京への憧れがありました。でも、自分が3浪して卒業しただけの、何者でもない状態で東京に行ったら、何者でもないまま終わるんじゃないかっていう不安みたいな思いもあって、それならまずは札幌で頑張ってみようかなと!

ただ、今でも北海道外への興味関心はありますし、もっと外の世界を見てみたいという思いはすごく強いです。

札幌に特化することが成功への要因に

原:TikTok運用代行でサポートされている企業も札幌近郊が多いですね。

米田:はい、僕自身も札幌在住なので、札幌近郊に特化してご支援しています。オンラインで色々なことができるようになっていますけれど、それでも、札幌から比較的近い距離の企業のほうが目的を達成しやすいと感じますね。

濱内:どういうことですか?

米田:動画は撮影が必要です。企業のご要望にもよりますが、弊社のチームが企画に沿った撮影をすることが多いので、立ち合いできる距離としてお客様が札幌近郊というのは大事ですね。

原:なるほど、撮影の仕方も重要なのですね。

米田:はい毎回オーダーメイドで対応している企業もあるくらいです。会いに行ける距離でなければ継続したご支援が難しくなってしまうので片道1時間くらいで移動に負担が少ないか?というのはしっかり検討していますね。

原:どれくらいの頻度で会いに行っているんですか?

米田:僕は月に1~2回くらいです。基本的にはオンラインなどではなく、直接顔を合わせてミーティングしたり、撮影したりしています。

原:オンラインよりも直接コミュニケーションをとりながら進められることが多いのですね。

米田:お客様から聞くと、他の運用代行などの外注会社さんでここまで頻繁に訪問する会社はあまりないみたいで、フォローが手厚いと驚かれることもあります。

濱内:ショート動画自体はオンラインで発信するものだけど、制作の現場ではリアルを大事にしているんですね。

米田:もしかすると、それが事業が上手くいっているポイントなのかもしれません。企業のニーズを深く捉えるのにも顔を合わせてのコミュニケーションがなんだかんだいって、効果的なのかもしれません。

起業したことで“人生のマイナスを取り戻した”

原:起業して一番良かったなと思うことは何ですか?

米田:自分がやっていることを、誰にでも堂々と言えるようになったことです。起業をした理由は、ぶっちゃけで言うと“3浪の悔しさ”なんです。3浪している間、高校の同級生たちはすでに大学生になっていて「今、何しているの?」と聞かれても、何も誇れるものがなかったんです。

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そんな…。じゃあ大学に入った後は…?

米田:3浪してようやく大学に入った後も、そこは変わりませんでした。自分がようやく大学生になった頃、同じ歳の人たちは就職活動とか社会人4年目になっていたので、話が合わず自分だけ常に遅れている感覚がありました。

起業してちょうど2年が経って、「自分は今、起業してこんな仕事をしているんだ」って、堂々と言えたとき、あ、起業してほんとに良かった、と思います。

高校を卒業して、浪人生活が始まった頃からずっと空いていた大きな穴がやっと埋まったと感じられるようになったのは、ここ最近です。すごく良かったです(笑)。

原:絶対成功するぞ!みたいな気持ちが起業の種になっていたのですね。

米田:経営者としては本当にまだまだなのですが、起業当初に成し遂げたかった目標は果たすことができたので、そこは成功している、ともいえます。ただ、これで辞めてしまうとまた元に戻ってしまうので、今度は会社として成功するために頑張ろうと気合いを入れ直しているところです。

濱内:どちらかというと人生的には次のフェーズに進めた感じですよね。

米田:本当に新しいステップに変わってきた印象があります。

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向上心!

原:「会社としてはまだまだ」だと思うのはなぜですか?

米田:僕が出会う人たちは皆さんすごい人ばかり。今の僕の会社は、社長の僕自身がもし何かあって1か月休むことになったら事業がストップしてしまうんですが、すごい人たちの会社って、社長以外のスタッフさんたちと一緒に事業を動かしている、強いチームがあって質の良いサービスを提供できているってすごいなと

起業して困ったことは?

原:起業して困ったことはありますか?

米田:仕事のご依頼が重なってしまい忙しすぎた時期があって、その時は大ピンチでした(苦笑)。

原:うまくいきすぎてということですね。

米田:起業して1年ほどが経ち、ようやく事業が軌道に乗り始めたのですが、そのタイミングで運用代行の依頼が一時期に集中して、一人でてんやわんやしていました。

原:どのように乗り切ったんですか?

米田:周りにたくさん助けてもらいました。実はそれまでは、打ち合わせから撮影、編集まですべてを僕ひとりで行っていたのですが、東京への出張などもあり、もうひとりではダメだなと感じました。

周囲に頼り、チームをつくって、業務を分担して。大ピンチを経て、初めて仕事を外注する、チームで良いものをつくっていく、という形ができていきました。

原:まさにピンチがチャンスですね。ピンチがあったからこそ、人に頼むという新たな事業の進め方を見つけられたのですね。

企業に眠る「ダイヤの原石」を磨いて輝かせたい

原:米田さんが次に目指しているところはどこですか?

米田:札幌近郊には魅力的な会社がとても多いと感じます。ただ、その良さが外に発信されず売上や採用に活かしきれていない

僕にはそれが、“ダイヤの原石”のように思えるんです。その魅力をどのように磨き、どうすれば伝えられるか?企画を練って、具体的に映像で表現し、たくさんの人に見てもらえる状態にしたい。60秒のショート動画で企業の魅力をどんどん日本中に届けていけたら最高です!

ロカロウ
ステキな想いだね!

学生起業を志す人へのメッセージ

原:何か起業をしてみたい、でも何をしたらいいかわからない人はどんなことをしたらいいでしょう。

米田:何をしたら突破口が見つかるかわからないときは、色んな人に会いに行き、自分のやりたいことを口に出すことから始めると良いと思います!

僕は、起業をした直後、なかなか受注に繋がらなかった時期がありました。自分ではどうすれば良いかわからず、あるベンチャー企業の社長に悩みを相談すると「出会う人数が少なすぎる!色んな所に行って、自分のやりたいことを口に出していくと変わっていくよ。そうやって動くと変わるかもしれない。」とアドバイスをもらい、すぐにそれを実践しました

原:なるほど、じっとしていないでチャンスを自分から掴むためには行動あるのみ、ということですね!

米田:大学生の方と話す機会があるのですが、『やりたいことがある』と言いつつも、結局起業せずに就職する道を選ぶ人もいるんですよね。もし、本当にやりたいことがあるなら、まずはたくさんの人に出会い、『これをやりたいです!』と自分の思いを伝えながら、やりたいことを実現する方法を探してみても良いのではないかと思います。

僕の場合、起業の原動力は『自分の劣等感を克服したい!』という想いでした。いわば『コンプレックス型』の起業です。ちょっと変わってるなって自分でも思いますが(苦笑)。

もし今、起業するには、キラキラした想いや社会貢献への意欲がないとだめ、と思っている人がいたら、僕みたいな起業の仕方もアリだよ!って伝えたいですね。

まとめ

浪人の悔しさをバネに、学生起業を決意し、さらに最初から法人化を選ぶという米田さんのその圧倒的な行動力に驚かされました。

多くの人と出会い、行動し続ける中で、コンプレックスさえも成長の糧に変えてきた米田さんの姿は、まさに挑戦する起業家の象徴です。米田さんのような熱い想いを持った起業家が、札幌を盛り上げてくれることに大きな期待を感じました!

 

取材協力

株式会社ショートムービー 米田  侑弘さん

 住所:〒060-0061 北海道札幌市中央区南一条西十六丁目1番地323 春野ビル3F
https://shortmovie.co.jp/