北海道の厳選素材を100%使用した安心安全なオリジナルの無添加ドッグフード「だいち」の開発・販売を行っている株式会社克フーズの小林宏幸さん。前編では、いくら良い製品を作ってもそれだけでは売れない、という苦労をどう乗り越えたかなどをお聞かせいただきました。
後編では、ひとり経営者が気を付けるべきメンタルヘルスとの付き合い方などを中心に、挫折しそうになった時の行動のヒントなどをお伺いしてまいりました。
(取材日:2021年9月)
明るく見える小林さんも、挫折した経験があったんだね。
株式会社克フーズ 代表 小林宏幸(こばやしひろゆき)
1989年生まれ、札幌市出身。小樽商科大学卒業後、札幌市の食品会社に入社。最終的には営業部課長として営業、製造・品質管理、経理などの業務に従事。2017年1月創業。オリジナルドッグフードの開発に一年を費やし、2018年1月から本格的に”北海道産ドッグフードだいち”販売開始。 YouTubeや札幌でドッグフードセミナー等も主宰。第1回「札幌 地域クラウド交流会 ®」優勝。ドッグフード口コミサイト「わんちゃんとドッグフード」監修。趣味はバドミントン、カフェ巡り。
社交辞令を間に受けず、自分から動くのが大事と学んだ出来事
原:起業して自分自身のここが変わったなーと思うことってありますか?
小林:良くも悪くも、人を信用しないようになりました。
小林:起業した当初は「今度人を紹介する」とか、「今度○○してあげる」とか、そういった声をかけてもらう度間に受けて喜んでいましたが、実際「今度○○」の約束を守ってくれる人ってほぼいないんですよ。もし本当にやってくれたらラッキーくらいに考えるのがいいですね。
原:社交辞令の「今度」に要注意、と。
小林:おかげで他人に必要以上に期待せず、自分からチャンスをつかみにいくのが重要だとわかったので、それからはとにかく行動するようになりました。
原:ということは元々は自分から行動するタイプではなかったのでしょうか。
小林:会社員の頃は全然違いました。基本的には人から教えてもらったり指示を受けないと動けないタイプでしたよ。いまの環境が、自分を変えたという感じです。
指示待ち人間からの脱却、変わったきっかけは友人からの励まし。
原:指示待ち人間からの脱却!何か変わるきっかけがあったのでしょうか。
小林:会社員の頃は起きて会社に行けば、山ほど仕事がありました。でも起業してからは「やらなければいけないこと」は何もないんですよね。
原:やるもやらないも自分次第ですものね。
小林:商品開発をしていた時はまだ良かったのですが、先ほどお話しした通り販売をし始めた当初、出せば売れると思っていたのにまったく売れず、メンタルが弱った時期がありました。この状況を変えるために何をすべきかわからず、次第に現実を見るのが怖くなって、一人で家にこもるようになったのです。
原:ひとりで事業を運営していると、同じ立場で悩みを相談をできる相手がいないのが辛いですよね。
小林:そうなんですよね。そんな時、たまたまその状況を知った友達が深刻さに気づいたのか、家まで尋ねてきてくれて「とにかく考えるよりも何か動こう」と、深夜に一緒にチラシ配りをしてくれたんですね。それで、ハッと気がつきました。どんなことでもいいから、とにかく自分が動かないと何も変わらないんだと。
原:考えすぎて動けなくなってしまうこと、誰にでもあると思います。背中を押してくれた友達に感謝ですね。ちなみにチラシの効果はどうでしたか?
小林:チラシは残念ながら直接売り上げにつながるような効果はなかったのですが、その結果もやってみたからこそわかったこと。頭でっかちになって動けないくらいなら、考える前に行動しようと、その出来事を境に自分が変わりました。
原:今の小林さんの行動力は、そんな過去の失敗から得たものなんですね。
小林:好きでする訳ではないけれど、結果的には「自分で失敗する」っていうのは良い経験だと思います。経営者の書いた本などはかなり読み漁っている方で、失敗談もたくさん読んでいるのですが、気づけば自分もいつか見たダメな方を選択してしまっている時があるんですよ。
原:自分ならうまくいくかもと思ったり?
小林:どうなんでしょう、今の自分の段階ではやるべきことじゃない・きっと上手くいかない、と自分でも思っているけれど、どうしても実際にやってみたくなることとかもあって。
原:例えば「テレビCM出してみたい」みたいな話ですかね。
小林:そうそう。理由なんてない、ただやりたいんだもん!みたいな。不思議ですよね。でもその「どう考えても合理的ではないけれどやってみたい」というのをやってもいいのが、一人会社の醍醐味かなって。
会社の収支を見て見ぬふりをしない、ゼロ円でできることは無限にある。
原:「とにかく行動と言われても何をしたらいいかわからない」という方に、何かアドバイスはありますか。
小林:それはね、まだまだ調べ足りないんだと思います。わかっているようで行動できないのは、わかっていない時です。
原:調べた結果、たくさん情報がありすぎてわからなくなってしまった時は?
小林:それは片っ端からやっていけば良いだけの話です。特に起業初期は、お金はないけど時間はあるという人が多いのではないでしょうか。僕は”ゼロ円だったら何でもやってみる”をポリシーに行動しています。
原:ゼロ円でできること、例えば今までにどんなことをされてきたのでしょう。
小林:サイトに掲載してもらう、取材してもらうなど、お願いするだけで実現するかもしれないことは全部やっています。SNSで自分から情報発信するのも、自分でやればお金はかかりませんよね。
原:広報活動が多いですね。広報は基本的には知恵と行動だけでできるのでご自身でやればコストはかかりませんし、メディアに掲載されると信用力があがったり、検索された時に自社に関連した情報がたくさん表示されるようになったりと良いことばかりです。
小林:無料で紹介してくれるサイトだけでも、探せば結構ありますしね。
原:広告費に大きな予算を割けない小さな会社こそ、工夫と努力で成果を出せる広報/PR活動にぜひ挑戦してもらいたいですよね。
原:小林さんがゼロ円でできること、広報に力を入れようと思った理由はありますか。
小林:会社員の頃にさかのぼりますが、経理業務で日々の収支を見ていると、このペースでいったら半年後・一年後、会社の経営状況がどのようになるかはすぐに予測がつくんですよ。ところが、会社のお金が減っていく未来が見えていても、みんな気づかないフリをして、何も対策をしなかったんですよね。
原:何とかなるのではと思ってしまうものなのですかね…
小林:現実から目を背けても何も変わらないですが…もちろんその結果、会社は倒産してしまいました。だから僕は起業直後からまずは規模が小さくても良いので収支のバランスがきちんと成り立つように、見て見ぬふりをしないで出ていくお金は極力減らす、ということを意識しています。
原:固定費などの経費を削減する努力をされているのですね。
小林:そうです。理想は経費ゼロなんですが(笑)。さすがにものづくりをしているとそれは難しいので、商品開発以外の部分の経費ができるだけ少なくなるよう工夫しています。今はお金をかけなくても、SNSを活用した集客など、やれることは無限にありますから。
何を売るかよりも誰が売るかが重要、だから自分が前に出る。
原:小林さんがYouTube(※下記参照)に力を入れられているのも、そういった背景があったのですね。
原:SNSは元々よく使われていたのですか?
小林:いやいや、YouTubeも今でこそ慣れましたが、最初は顔出しして動画で話すのなんて絶対にイヤでしたよ。
原:あら、意外です!
小林:あとは「ドッグフードを販売しているのに犬を飼っていない」という自分が人からどう見られるのか、批判されたらどうしようといった不安もありました。
原:そのような状態から、やってみようと思うようになったきっかけは何でしたか。
小林:そうですね、一番最初のきっかけは、起業後に「札幌 地域クラウド交流会 ®」でプレゼンをする機会をいただいたことです。自分の考えを大勢の人の前で伝えたはその時が初めての経験だったのですが、やってみたら案外平気だったんです。苦手だと思っていることもどんどんやってみようと思う、良いきっかけになりましたね。
原:プレゼンも、練習をたくさんしたり、本番の回数をこなすと慣れるものですよね。
小林:ありますねー。いま新規のお客様はほとんどYouTube経由なので、それなりに集客力あるんじゃないですかね!
原:それはすごいですね。YouTubeでの発信はいつから始めたのですか。
小林:YouTubeチャンネルは起業後、まだ商品を販売する前のプロトタイプ開発の段階から始めています。
原:販売前から!いまどきですね。
小林:経営について学ぶ中で「モノを売る時代は終わった、何を売るかよりも誰が売るかが重要、でもそれに気づいていない人が多い」という話を聞き、みんながまだやっていないなら勝てるかも、まず自分のファンを作ろうと思ったからです。
原:コツコツと積み上げてブランドを作ってこられたのがよくわかります。自分にファンがつくと、商品販売だけではなくコンサルティングなど事業の幅も広がっていきそうですね。今後も継続してYouTubeを活用していく予定ですか?
小林:うーん、正直なところ、最近の自分は挑戦が足りないと感じているので、そろそろまた別の、新しいことを仕掛けていきたいと考えているところです。自分のできることだけやっていても、それは逃げなんじゃないかと思うので。自分自身も成長しませんから。
一人会社のメンタルヘルス。成長し続けるためにしていることとは。
小林:いやいや、逆です。基本的に人間ってすぐラクな方にいきたいものじゃないですか。僕の場合は特にECメインの自社事業かつ一人会社なので、基本的に時間に縛られることがまったくない、自由な環境です。だから気を抜くとすぐ楽をしようとしてしまうんですよね。
原:一人会社・個人事業主は、成長していなくても誰も注意してくれませんからね。ダメな人間になってもただみんなが離れていくだけですよね…
小林:仕事に対するモチベーションを高く持ち続けることや、やる気が低下したときにどうやって戻ってくるかなど、自分自身をコントロールするのって難しいですよね。
原:経営者はただでさえ孤独ですし、周りばかりが良く見えて自信を失くす時などもありますよね。
小林:そう、だからできるだけ自分を客観視するのが大事だと思っています。ある面では上手くいっていても、別の面から見たらどうだろう?と。
いま創業4年半なのですが、起業してからここまでは「自分がやりたいかどうかを大切にし、自分の意思で生き方を決める」という軸でやってきたんですね。そしてそれはだいぶ実現できました。
でも会社や事業としてはまだまだといったところ。それをわかっていながら現状の居心地の良さに甘えているのを自覚しているので、次はどうする?と自分を見つめ直しているところです。
原:それはもしかすると、ステージがひとつ上がった、ということなのかもしれませんよ。
小林:そうなんでしょうか?!ああ、そういえば僕、人生という長いスパンで見ると数年単位で、すごく頑張って結果を出す時と、さぼって停滞する時を繰り返しているということに気づいたんです。
原:ずっと頑張り続けられる人の方が少ないのではないでしょうか。良い時と悪い時を波のように繰り返しながら、人も企業も成長していくのかもしれませんね。
原:最後に、起業して良かったですか?
小林:良かったですね。会社員の頃は「仕事というのは人に気を遣うもの・辛くて当然”と教えられてきたのですが、その常識が覆されました。サラリーマンでは見れなかった景色を見ることができていて、世界が広がった楽しさがあります。
原:これからの目標や目指す姿があれば教えてください。
小林:おかげさまで売り上げは右肩上がりに成長しているので、このまま少しずつ利益を増やして、生産者さんにもっと還元できるようにしていきたいです。あと個人的には挑戦し続けている人になりたいですね。いままでの人生、常に、良い意味で5年前には想像していなかった自分になっているんです。目標から逆算して行動する人もいますが自分はその逆。今までできなかったことや、やっていなかったことにチャレンジし続けたその先に、想像していなかった世界があると信じています。その新しい世界を見続けたいので、これからも挑戦し続けていきたいです。
原:本日はありがとうございました!
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