北海道札幌市白石区の卓球場「Ping T Studio」を経営する、京極町出身の吉川睦美さん。インタビュー前編では起業のきっかけや起業前にやってよかったことなどをお伺いしました。
後編では、起業時の資金調達やプロモーション、そして起業してよかった?など、起業直後の皆さんが気になる起業後1-2年の本音をお聞きしました。
Ping T Studio 共同代表 吉川睦美(よしかわ むつみ)
1997年生まれ、24歳、京極町出身。北海学園大学 経営学部に進学。大学在学中に、幼少時から大好きだった卓球を仕事にするための事業アイデアを発想し、2019年4月27日に22歳の若さで北海道札幌市に卓球場「Ping T Studio」をオープン。
資金調達にクラウンドファウンディングを使って良かったこと
原:開業資金の一部にクラウドファウンディングを利用されたそうですが、やってみて良かったですか?
吉川:資金調達という面だけで言えば、自己資金だけでスタートできるならばそうした方が良いかなとも思いますが…
原:では資金が十分にある状態で開業するなら、いまならクラファンは使用しませんか?
吉川:そうですね…結構大変だったので悩みますが、よかったことはクラファンをやったおかげで北海道新聞で紹介してもらえたんです。そしてそこから派生して他のメディアでも紹介していただいたので、そういうクラファンならではの宣伝効果みたいな部分はありだと思いました。だからやっぱり今やるとしても使うかな。
原:なるほど、お金以外のメリットに期待して活用するのも良いのですね。開業資金調達にクラファンを利用する際に、気をつけた方が良いことなどありますか?
吉川:周りとの距離感の取り方、でしょうか。
クラファン開始のときに、知り合いの方に「クラファン始めたので応援よろしくお願いします」と直接メッセージを送ったんです。すると、「応援する!」と言ってくれる人と、返信がなかったり、そっけない態度になりその後少し距離を置かれるなど、ちょっと気まずい雰囲気になってしまった方もいまして。
お金が絡むと本当に応援してくれる人が誰なのかなんて、人の本音も見えてきちゃうよね。
吉川:こちらとしては、もしよかったら…くらいの気持ちで送ったのですが、人によっては「お金ちょーだい」って言われたように思われたのかなと。後から反省しました。なのであまりお願いしすぎない方がいいかなと思いました。
原:たしかに、人によって伝え方は気をつけた方がよいのかもしれませんね。ちなみにリターンはどんなものを設定されたのですか?
吉川:スタジオの使用権と、オリジナルTシャツやステッカーなどです。でも一番人気は実家で採れたじゃがいもでした(※ご実家は農家)。ネタですかね?!それとも皆さん本当にじゃがいもがよかったのか…
共同経営ならではの工夫
原:「Ping T Studio」は共同経営なんですよね。
吉川:はい、経営は2人で行っています。
原:役割分担の工夫などありましたら教えてください。
吉川:基本的にはそれぞれの得意を活かして役割分担をしています。卓球の面では、木村コーチはキッズクラスや大会に向けた指導を中心に担当しています。わたしはそれ以外の、卓球を楽しむことに重きをおいている方へのレッスンを担当することが多いです。経営面では木村が経理・事務系作業を、今回のような取材や外の方とのつながり作りをわたしが担当しています。
原:ちょうど良い感じに、お互いに得意不得意がちがうんですか?
吉川:そうなんです。そういうパートナーだとやりやすいですよね。
ポジショニングが当たり、広告費ゼロでも利用者増。
原:では次に、集客の工夫について教えてください。まずは皆さん苦労される起業当初の集客について。
吉川:起業当初は、それまで個人でやっていたパーソナルコーチのお客様がそのままこちらに来てくださった形です。
原:なるほど、最初からお客様が吉川さんについていたのは強いですね。最近はどのような集客をされているのでしょうか?
吉川:あまりこれといって積極的な集客施策は行っていなくて…。ホームページから来られる方が多いですね。お客様の口コミと、web検索で見て来たという方が多くて、「札幌 卓球」とか「札幌 卓球教室」とかで検索すると、「Ping T Studio」のホームページが上の方に出てくるので、それを見て来てくれるようです。
原:「教室」で検索されているということは教えてほしいという方も多いんですね。
吉川:そうですね、学生時代にやっていて20〜30年ぶりにやりたいという方もいますし、あと世間で卓球が話題になるとその影響でやりたくなる人が急に増えたりしますね。今年は特に、お子さんがオリンピック見て卓球やりたいと言っていて、といったお問い合わせがすごく多かったです。
原:SEO対策に力を入れているとか?
吉川:いえ、それも特に気にしたことはないんですが、自然と表示されているみたいで。
原:元々地域のニーズはあった・それに対して卓球教室のサービス提供者が少なかった、というところにちょうどはまったビジネスってことですね!
吉川:そうかもしれません。卓球教室や卓球台の貸し出し自体は市や道の体育館でもやっていますが、予約するには申込書を体育館の窓口に提出する必要があったり、まだまだアナログ文化なんですよね。民間の卓球場もいくつかありますが、ネット予約ができるところは少ないです。
吉川:だから、ホームページがあって、レッスンや卓球台のネット予約ができる、というだけでも珍しいんだと思います。学生時代に卓球部で、大人になって時間に余裕ができたのでひさしぶりにやりたいという方、結構多いんですよ。そういう方がおひとりでも気軽に遊びに行ける卓球場ってあまりないので。
開業1年目はほぼ休みなし、それでも頑張れたのはやっぱり好きだから!
原:開業準備で辛かったことはありますか?
吉川:3階のこの事務所まで、卓球台を3台持ってくるのが大変でしたね〜。結局わたしは途中で戦力外認定されて、力持ちの人たちに協力してもらったので自分がやったわけではないんですが(笑)
原:辛いことすら楽しい思い出的な、青春の匂いを感じます。
吉川:ははは、それくらい辛いことが少ないですね。
原:では開業後に苦労したことはありますか。
吉川:休みがないことが大変といえば大変ですね。定休日なしでやっているので。旅行とかも行けないですし。
原:えぇっ?!いや、それは、、休んでください!!!
吉川:あはは。不定期で月1日くらいは休んでるので大丈夫です。休みたいなーとちらっと思っても、いつも来てくれているお客さんの顔がちらついてしまい、店に出るとやっぱり楽しいので休む気になれないんですよね。
吉川:あとオープンから1年はわたしも木村コーチも2人とも朝10時から夜10時まで出ていたのですが、2年目からさすがにきつくなってきたので今は2人で時間交代制にしました。だいぶ楽になりました!
原:よかったです…くれぐれも健康には気をつけてくださいね。お客様はどんな方たちが多いのでしょうか。
吉川:結構幅広くて、大人のグループレッスンも子供のグループレッスンもしていて、一番下で6歳くらいから、いまはまだご年配の方は自粛されている方も多いですが、80歳以上の方もいらっしゃってますね。
原:文字通り、老若男女の方に愛されているんですね。
ずばり、起業してよかったですか?
吉川:それは断然よかったです!いま楽しいですし、自分の人生生きてるなって感じがします。好きを仕事にできていて幸せだなと思いますし、好きだからこそ悩む時もありますけど、それも含めて生きてるなって感じが楽しいです。
原:好きなことで起業、と考えたときに皆さん気になるのが「果たしてそれで生活ができるのか」じゃないかと思います。今って収益はどんな感じですか?
吉川:おかげさまでオープン当初から生活に困らない程度には!直近1ヶ月(2021年8月)は、オリンピックの影響もあり開業後最高月商でした。
原:2020年からのコロナ関連の影響はいかがでしたか。
吉川:良い方の影響が大きかったです。緊急事態宣言中など、公共施設の体育館が利用制限で使うことができなかったときにこちらに流れてきた印象があります。
原:なるほど、体育館が利用できなくなったおかげ、というのも変ですが、卓球愛好家の皆さんが練習できる場所を求めていらっしゃったのですね。
吉川:そうですね、「日頃練習に使用している体育館は閉鎖されているけれど、開催予定の大会があるので練習したい」という方など、この機会に新しく来てくださった方もたくさんいらっしゃいました。
原:いずれは他店舗展開とかも考えていますか?
吉川:実はかなり前向きに考えています。コロナの状況次第ですが、良い物件がないかはチェックしてますね。
原:そうなんですね。楽しみです!そうなると次は従業員の雇用、といった新たなステージになってきますね。
吉川:密かにその準備も進めていて、時期が来た時に一緒にやっていきたいなと思う方に声をかけて、根回しをしていたりもします。
これから起業を目指す人へのメッセージ
原:では最後に、これから起業を目指す人たちへのメッセージをお願いします。
吉川:いまはコロナウイルスの影響で、この先がどうなるのかなかなかつかめない状況ですが、だからこそ「今できること」から少しずつ行動することをおすすめします。
原:ちなみに吉川さんの場合は、どんなことから始めましたか?
吉川:わたしは最初、アルバイト程度ですが民間の卓球場で場所を借りて、卓球の個人コーチをしてみたりもしました。そして色々な人に話を聞きに行って、自分がやりたいことを話してアドバイスをもらっていました。小さなことでもいいので、動いてうまくいけば続けたり広げたりすれば良いし、失敗したらでは別の方法で、といった次の挑戦につながるので。だからまずできることから挑戦してみてほしいです!
原:小さなことからまず行動、ですね。本日はありがとうございました。
ひさしぶりに、卓球行ってみない?
学生時代に卓球部だった、という方はもちろん、温泉卓球くらいしかやったことがないというわたしのような卓球初心者さんまで、どんな方もあたたかく受け入れてくれそうな「Ping T Studio」。
聞くところによると、お客様も暖かくて優しい人が多く、「通っているうちにいつの間にか卓球友達が増えた」なんて人も多いとか。レッスンはレベル別に、卓球未経験・初心者・中級などクラス分けされているそうなので、どのレベルの方も安心して利用できますね。
レッスンを付けずに卓球台やピッチングマシンのみの時間貸しなども対応しています。
気になった方は「Ping T Studio」のホームページをのぞいてみてください。
取材協力
Ping T Studio 共同代表 吉川睦美さん
住所:〒003-0003 北海道札幌市白石区東札幌三条6丁目1-1 第2小竹ビル3階
電話番号:070-4495-8465
https://pingtstudio.com/
https://twitter.com/mutsumi_pingt