「こんな課題を解決したい」「このアイデアを実現したい」
こんな風に起業に関心を持つことがあっても、就業経験やビジネス経験がないと、何からどのように手をつけて実現していけば良いのかまったくわからない、といった場合もあるでしょう。
そんな学生さんの起業や挑戦を全力でサポートしてくれるNPO団体が、札幌にあります。
「あなたの考えていることには価値がある、想像の中だけで “自分にはできそうにもない” と諦めてしまうのはもったいない!」
と、エールを送ってくださったのは、本日お話をお伺いした 北海道エンブリッジ 代表理事の浜中裕之さん。
多くの起業家を輩出している若年層向けの起業支援プログラムmocteco(モクテコ)について、そして浜中さんご自身の起業エピソードなどをお伺いいたしました。
(取材日:2022年4月某日・インタビュー/文:ロカプレ編集長 原くみこ)
1985年 北海道留萌市生まれ。2006年、大学2年の時に広告会社のインターンシップに参加し、働くことの楽しさを実感。広告営業からインターンシップのコーディネートを経験し、2008年に任意団体ピオネイロを設立。2012年特定非営利活動法人(NPO法人)北海道エンブリッジとして法人化、代表理事を務める。
- 1 NPO法人『北海道エンブリッジ』挑戦する若い世代を支援する3つの事業
- 2 いま特に力を入れているのは、全道に取り組みを広げていく活動
- 3 インターンシップ生がインターンシップのコーディネート?!
- 4 就職を考えていたインターンシップ先がまさかの!
- 5 親の反対を説得し、困難を乗り越えながらの事業スタート
- 6 インターンシップコーディネート事業のビジネスモデルとは
- 7 長期インターンシップ事業との運命的な出会い
- 8 法人化のきっかけ
- 9 若年層向けの創業サポート・創業支援mocteco(モクテコ)について
- 10 Instagram広告を使って全国から集客
- 11 応募者全員と面談し、提出プランへのフィードバック
- 12 学生さんの参加費用は無料。寄附金と持ち出しで学生の起業を応援
- 13 今後のmoctecoの展開について
- 14 起業支援の輪を全道179市町村に広げたい!
- 15 「あなたの考えにはすごく価値がある」ということを伝えていきたい
- 16 ちょっとでも起業に意欲のある学生さんは迷わず挑戦を!
- 17 取材協力
NPO法人『北海道エンブリッジ』挑戦する若い世代を支援する3つの事業
原:最初に、エンブリッジさんの主な事業について教えてください。
浜中:取り組みとしては大きく3つあります。まず1つ目が、メイン事業の『インターンシップのコーディネート』です。
浜中:北海道でよく行われているインターンシップと比較して違う点は、期間が最低半年以上、長い場合は1年〜2年と長期であることです。
原:ということは大学2年生や1年生から参加される方も多いのでしょうか。
浜中:そうですね、大学1年生から大学院生まで幅広く参加しています。
そして取り組む内容にも特徴があります。通常インターンシップでは、企業内での「作業」的な業務を切り出して、学生に行ってもらうというケースが多いのですが、私たちの企画するインターンシップでは新事業や新プロジェクトの立ち上げなど、いつかやりたいと思っているけれど社員は現状の業務で忙しく手が足りなくて実現できていない、といったことをプロジェクト化し、企業の新しいチャレンジも支援します。
企業と学生が一緒になって形をつくっていくことにチャレンジしましょうというような、実践型のインターンシップです。
浜中:2つ目の事業としては、インターンシップでの企業内でのチャレンジという枠を超えて、自分の土俵でチャレンジしたいという子たちが現れてきたことをきっかけに、若年層向けの創業サポート・創業支援を4年前に開始しました。これがmocteco(モクテコ)です。
ちいさな「プロジェクト」だって、りっぱな「シゴト」になる。 mocteco【モクテコ】とは、高校生・大学生を対象にした創…
3つ目が、そういうことを札幌で取り組んでいると「そのような取り組みを、全道各地でできませんか?」という相談を受けるようになりまして。
そこで北海道庁や経済産業省と連携しながら、北海道各地にぼくらみたいなコーディネート機関を増やしていって、地域に密着した起業支援だったり、実践型のインターンシップを全道に広げていく取り組みをしています。
原:3つ目の事業はホームページにも掲載されていませんよね?初めてお伺いしました!
浜中:ははは、そうなんですよね。密かにやっています。
ちなみに昨年度は11市町村と連携をしました。まず大学のある帯広・北見・函館・旭川から始めていき、次第に大学がない地域にも広げていって、いまでは八雲、下川、西興部村などでも立ち上げることができました。
そういったハブをつくりながら、北海道の地方でも学生がチャレンジできる環境を作りたいなと思って取り組んでいます。
原:大学のない地域のプロジェクトの場合は、参加する学生さんをどうやって集めているのでしょうか。
浜中:近隣の、大学のある中核都市や札幌などの大学に通う学生さんが各地域に来て、参加しています。
原:なるほど、地方の大学生のインターンシップの種類や体験が限られてしまう、といった課題にも対応されているんですね。
いま特に力を入れているのは、全道に取り組みを広げていく活動
原:3つの事業の中で、今特に力を入れている事業というのはありますか。
浜中:全部まんべんなく力を入れている感じですが、2つ目の、全道に取り組みを広げていく、という活動に若干力をいれてますね。事業の立ち上げ期とも言えるので今が頑張り時という感じがあります。
原:では今年はさらに全道各地の市町村で、実践型インターンシップのコーディネートを行うことのできる機関や団体が増えるということですね。
浜中:はい、その予定です。
あ、コーディネーターさんは必ずしも団体とは限りません。例えば苫小牧市の場合は市職員の方がコーディネーターとなり、市の取り組みの一環としてプロジェクトを行われています。他の場合も、コーディネーターさんが個人の場合・NPO・株式会社と、色々なかたちで取り組まれています。
原:そうなのですね。全道に支援の輪を広げていくにあたって、市町村側からやりたいといった申し込みがあるのでしょうか
浜中:市町村から直接、というよりは、最初は、関心の高い個人の方からお問い合わせをいただくことが多いですね。その後、その方が所属している団体などを巻き込んでプロジェクト化していくようなイメージです。
苫小牧市の場合も、一番最初はいまコーディネーターをやってくださっている担当の方から個人的にお問い合わせをいただき、それをきっかけに担当の方から市長さんなどにご提案・承認、と進めてくださって実現しました。
インターンシップ生がインターンシップのコーディネート?!
原:浜中さんのご経歴と起業のきっかけを教えてください。
浜中:1985年に留萌市で生まれ、父が道庁の職員だったので子供の頃は転勤で北海道を転々としていました。網走、留萌、砂川、奈井江、などなどに移り住んだあと、小6から札幌市在住です。いまこうして活動を北海道に広げていきたいと思う原点がその経験にあると感じていて、全道どの地域も行ってみると知らない土地ではないホームという感覚があるんですよね。
原:全道各地の多くの地域が、昔いた場所、行ったことのある場所、なんですね。
浜中:そうですね。訪れると、懐かしい!と思うことが多いです。
原:転機は大学のときだったとか。
浜中:はい、2005年に北海学園大学に入学し、大学2年の頃に札幌のベンチャー企業でインターンシップに参加しました。
そこの会社の「インターンシップ事業部」で「インターンシップのコーディネート」の活動をスタートして、色々な中小企業さんをひたすらまわるというのをやっていました。
原:ちょっと混乱しそうですが、インターン生として「インターンシップのコーディネート」を仕事としてやっていた?
浜中:そうです!当時は面白い会社さんや素敵な社長さんを見つけるためにひたすら中小企業さんを訪問して、インターンシップ生をコーディネートしていました。
そこでインターンシップをしている学生たちの成長や、企業側も学生と一緒に「こういった新しいチャレンジをしてみようかな」と変わっていく様子を目にして、この取り組みをもっと広げていきたい・仕事にしたいと思い始めました。
就職を考えていたインターンシップ先がまさかの!
原:それで学生起業することにしたんですね。インターンシップ先のベンチャー企業にそのまま就職することは考えなかったんですか?
浜中:僕もそこでやっていくことも考えていたのですが、大学4年のときに、組織が解散することになってしまいまして。
原:あらら…
浜中:解散してもこの仕事を続けたいなという気持ちはありつつも、こっそり就職活動をして別の会社から内定をもらっていたので、卒業後の進路はかなり葛藤していました。
原:就職先も決まっていた状況で、起業を決断した理由は何だったんでしょう。
浜中:やっぱり自分はこの仕事をやりたくてやっていた、っていう想いを捨てきれなくてですね。
そこまでの経験の中で、色々な経営者の方達が自分の責任で自分のやりたいことを形にしている姿を見てきて、自分もそうありたいと感じていて、目の前に「自分はこれを実現したい」ということが見えている中で…
それを一旦脇に置いて就職するのか?と考えたときに、自分への後ろめたさを感じたんですよね。
原:自分の気持ちに嘘はつきたくない!って感じでしょうか。
浜中:一方で、今が自分にとって一番身軽に動いて挑戦できる時だから、そんな今行動することができなかったらこの先もできないんじゃないか、と考えたのが最後の決め手だったかもしれません。
原:確かに、失うものはまだ何もないといった勢いですね。
浜中:就職して結婚して子供ができてなんか会社で役職がついたりとかそうなっててじゃあそれを捨ててもう一回チャレンジするほうがハードルが高いだろうと。まぁダメでも若いうちなら再就職もできるだろう!と楽観的な気持ちもありましたね。
親の反対を説得し、困難を乗り越えながらの事業スタート
原:親に反対されたりしませんでしたか。
浜中:反対されました!説得して、最終的には「3年でうまくいかなかったら就職する」と猶予をもらい、そんな感じで、自分としても「まずは3年やってみよう」と思ってスタートしました。
原:それが、大学4年生の時ですね。
浜中:そうです。解散が決まった後の前社長に、自分一人でインターンシップ事業を続けられないかどうかを試してみたいっていう相談なんかもして。試しに卒業までやってみようと決めたのが、大学4年生の12月でした。
原:では創業時は、前の会社の人脈やつながりとかはそのまま使って始めたような感じなんですかね。
浜中:うーん、そうですね。もちろん、良いご縁も引き継がせていただきながら、大変なことも多かったように思います。その辺はなんとも難しいですよね。
原:なんだか歯切れが悪いですね(笑)
浜中:やっぱり前の組織を応援して下さっていた方々には、組織が解散していく過程でたくさんご迷惑やご心配をおかけしてしまったなと思います。
そんな中、当時ただの学生だった僕が「自分1人で続けていきます!」と言い出したわけで、応援して下さる方もたくさんいましたが、「いやいや、やめた方が良いんじゃない?」と心配や反対のご意見をいただくことも多かったです。
原:前職の地盤があったからこそ大変だったところもあるってことですね。
浜中:おっしゃる通りだと思います。
原:では経験を活かして、ではありますが、事業としては浜中さんの名前で気持ち新たにやっていくぞ!という形で始められたということですね。
インターンシップコーディネート事業のビジネスモデルとは
原:起業当初から行われているインターンシップの事業ですが、こちらはどういったビジネスモデルになっているのでしょうか。収益は寄付金でしょうか。
浜中:企業さんからの会費を頂きながら運営をしているので、会費収入になります。
原:インターンシップの受け入れをする企業さんが会員、というイメージでしょうか。
浜中:会員の多くはインターンシップの受け入れをしている企業さんですが、インターンシップは受け入れてないけど応援の気持ちとして会員になるよ、会費を出すよっていう企業さんもいますよ。
原:そうなんですね。
浜中:はい、ただその場合は、会費という名の寄付金のような、本当に応援のお気持ちをいただくという形だったりします。
長期インターンシップ事業との運命的な出会い
原:創業してしばらくは、長期インターンシップの事業だけを専門に行っていたんですよね。
浜中:はい、エンブリッジを2008年に設立して10年ぐらいはインターンのコーディネートしかしていませんでしたね。
2つ目の事業がmoctecoで、そちらがいま5期募集中なので今年で5年目かな。だから本当にそうですね、2018年ぐらいまではインターンの事業だけです。
原:10年前って、そういった形の長期インターンシップを企画すること自体、まだかなり珍しかったのでは?
浜中:もう北海道ではまったくなかったですよね。東京でだんだん広がってきた頃かなと思います。
原:そんな時期に浜中さん自身が長期インターンシップの仕事に、インターンシップ生として携わることができたというのは、運命的な感じもしますね。当時、この分野に関心を持たれたきっかけなどがあったのでしょうか。
浜中:一番最初は、東京で長期インターンシップを草分け的に始めたETIC.(エティック)っていうNPOがありまして、そこの人たちとの出会いがきっかけだったんですよね。
2000年の手前頃、当時はちょうどITバブルで、渋谷を中心に多くのITベンチャー企業が急成長していた頃です。エティックはそういった勢いのあるベンチャー企業のインターンシップをコーディネートしていました。
エティックのプログラムでインターンシップを経験した子たちが経験を活かして即戦力となり、すぐに取締役とかになったり、自分でベンチャーを起こしたり、連鎖的に色々な面白い企業が生まれていくという、そういう勢いがすごくて。
それで、経済産業省がそのモデルを全国に広げていきたいという事業を行っていたようです。で、僕がインターンをしていた会社が、その事業を札幌で広める担当だったというわけです。
浜中:その話を聞いて、ぼくはもともと学校の先生を目指していたんですけど「なるほど、こういう教育のあり方もありだな」と思って。
それで長期インターシップのコーディネート事業の部門に志願し、立ち上げのときからのメンバーになったっていうのが最初ですね。
原:では興味を持っていた「教育」というところから広がっていったという形なんですね。
浜中:はい、ずっと高校の先生になろうと思っていたんですよ。
原:いつぐらいからですか?
浜中:学校の先生になるっていう夢は、小1とか小2ぐらいからだと思います。
原:それがこのインターンシップの経験で、ガラッと変わったんですね。
浜中:そうですね。教室の中にいるばかりが学びじゃないなっていうことや、教育にも色々なかたちがあるんだなって思いましたね、そのときに。
原:そのような教育に対する想いが浜中さんの根底にあるので、学生さんと地域を繋ぐ、といったところをミッションにされているというのがすごくよくわかりました。
法人化のきっかけ
原:3・4年ほど個人で活動をされた後に、法人化することになったきっかけというのは。
浜中:事務所をずっと間借りしていたのですが、その間借り先が移転することになり、自分たちで物件を契約しなくてはならなくなったのを機に、法人化をすることになりました。
原:色々ある法人の形態の中でNPOを選んだ理由は。
浜中:株式会社かNPOか、他にも合同会社とか、いろいろ悩んだんですけど。大学との連携とかいろんな人の力を借りながらやっていくには、NPOが一番いい形態なんじゃないかと思って決めました。
ぼく自身が、営利を目的としたかった訳ではなかったのでそれも含めてですね。
原:そして2012年にNPO法人を設立された、ということですね。設立時のチームのメンバーって何人ぐらいいらっしゃったんですか
浜中:NPO法人には設立時に10人のメンバーが必要なので運営は学生たち10人と、理事とか役員メンバーは応援してくれている企業さんとか大学の先生とかそういう方が入ってスタートしました。
原:法人化して何か変わったことはありますか
浜中:何かあったかなぁ(笑)法人化したのはもう10年前ですからね。
原:そうですよね!結構前ですよね。
浜中:これで本当にちゃんとやっていくんだなっていう、決意表明になったのかなと思っています。
それまではもしかすると「あの時なくなりそうだったものを、なんか頑張って続けようとしている若者がいるな」ぐらいに思われていたかもしれないので。法人化したことで、腰をすえてやっていこうとしてるんだなということを周囲に表明できたと思います!
若年層向けの創業サポート・創業支援mocteco(モクテコ)について
原:では次に、mocteco(モクテコ)についてもう少し詳しく教えてください。いまはちょうど、2022年度のエントリー受付中ということですね。
浜中:はい、moctecoは高校生・大学生を対象にした創業サポートプログラムです。1年に1度メンバーを募集しています。2021年度は9月スタートで3ヶ月のプログラムでした。2022年度(5期生)は現在エントリーを受付中です。
※2022年7月1日現在、2次エントリー募集中!詳しくは下記ページをご覧ください。
これまで高校生2名と大学生51名がエントリーし、8名(6社)が起業した創業支援プログラム「mocteco(モ...…
原:1年に1度の募集ということは、参加できるのはかなり限られた人数になりますね。1期は何人制度なんですか
浜中:特に制限は設けていませんが、去年は15チーム/20名が参加しました。
原:ということは、複数名のチームがあったり、お一人で参加する方もいたり?
浜中:そうです。
原:どんなことを行うのでしょうか。
浜中:自分の関心がある社会課題とか試してみたいアイデアを、3か月間で実際に試してみて、100円でもいいから稼ごうっていうのがミッションになっています。つまり最初のお客さんを見つけるところまでをサポートするプログラムですね。
原:どのくらいの方がそのミッションを達成できますか。
浜中:だいたい6割ぐらいの学生が売上をあげるところまではいけますね。
浜中:自分のアイデアがこうやってお金になるんだ!とか、ちゃんと応援してくれる人がいるんだ、みたいなことを感じられるところまではサポートしたいと思ってやっています。
そこからさらに踏み込んでいって、例えば月8万円くらい売り上げられるようになってくれば、アルバイトを辞めてこっちをやってもいいな、みたいになりますし。
月15万〜20万ぐらい稼げるようになった辺りから、リアルに「起業」っていうことが自分のキャリアの選択肢にあがってくると思います。
原:かたちにするというだけじゃなく、きちんと稼ぐ、ということまで考えられているんですね。
浜中:ただ学生たちはその手前、まだ実際に動く前から「自分は起業したいのかどうか」みたいなところで悩んでいる人が多いんですね。
原:わかります(笑)。社会人でも同じかもしれません。
浜中:考えているだけでは答えが出ないので、少しでも実績や手応えを感じて初めて「自分は本当にその道を選ぶべきなのかどうか」を悩むべきだと思っているので、まずはそこまではチャレンジしてみたらいいんじゃないか、っていう後押しをしたいと思っています。
原:社会人の起業でも、最初のお客様を掴む・ファーストキャッシュを稼ぐというのが難しいと思うので、その辺の高額な起業塾よりもちゃんとしてるというか(笑)そこまでサポートしてもらえるのってすごいですね!
浜中:ははは、そこがやっぱり最初のハードルですよね。動き始めが一番大変ですからね。
Instagram広告を使って全国から集客
原:moctecoの色々なサポートプログラムは、札幌会場での対面を基本として行われるのでしょうか。オンラインでも受けられるんですか。
浜中:オンラインでも受けられます。
原:では参加者の方は全道から?
浜中:実は去年まで参加者の居住地は特に制限していなかったので、半分くらいは北海道外の子が参加していました。今年は「北海道在住であること」または北海道外在住の方の場合は「北海道に縁があるプロジェクト」での応募、としています。
原:そうなのですね。参加された方は、何を見てmoctecoのことを知った方が多かったのでしょうか。
浜中:去年はInstagramの広告が多かったですね。
原:なるほど!それで北海道外の方にもリーチできたんですね。対象は高校生と大学生とのことですが、実際の参加者の割合はどんな感じですか。
浜中:ほぼ大学生ですね。高校生は過去に数名で、ひとつの期に1人いるかいないかくらいです。
原:男女比はどうですか。
浜中:そこは半々ぐらいかな。やや女性が多いか、女性6:男性4くらいでしょうか。
応募者全員と面談し、提出プランへのフィードバック
原:参加の流れとしては、応募後にまず審査があるんですね。
浜中:はい、まずコーディネーターとの面談をします。
原:面談までは、応募すると誰でもしていただけるんですか?
浜中:面談は全員しますね。
原:その面談が審査となって、本当にプログラムに入れるかどうかを決める、と。
浜中:はい、そこで合否があります。
原:どのような審査基準があるんでしょうか。合格のポイントなどがあれば教えてください。
浜中:ポイントっていうのはどうだろうなぁ。コーディネーターによっても違うとは思いますが、頭の中で作り上げたプランというよりは、『自分の実体験に基づいた課題を解決したいと考えている』とか、『こういう経験をしたのでこれを世の中に広げたい』とか、自分の体験から作られてきたプランだと合格することが多いなと思います。
原:そこのジャッジは、コーディネーターさんに任されてるんですか。
浜中:いえ、個人の判断ではなく運営メンバーみんなで相談しますね。そして、ただ単純に「不合格です」ということにはしません。
もし、応募内容のままではちょっと実現するのが難しそうな場合は「この点をさらに少し深く考えることができたら、もう一歩踏み込めるよね」みたいな逆提案をします。
それからブラッシュアップして合格になる子もいますし、それなら今期はちょっとやめておきますっていう子もいますね。
原:では応募の際にはまだぼんやりとしたプランだったという方でも、応募後の面談を経て、企画を練り直して通る、という方もいるわけですね。
浜中:はい、最初はこういうことを考えていたけど実際にやりたいことはこっちだった、みたいにガラッと変わる子達も多いですね。
原:それはもう、応募するところからかなり学びになるっていう感じですね。
浜中:はい、本当に!だから興味がある子はまずチャレンジしてみたらいいんじゃないかと思います。
学生さんの参加費用は無料。寄附金と持ち出しで学生の起業を応援
原:参加費用はいくらくらいですか。
浜中:参加費用は、かかりません。
原:えっ?!応募される方は参加無料ですか?エンブリッジさんの収益から出すっていう感じですか?
浜中:はい、いまのところそうなってます。もうねぇ、大変な赤字事業ですよね(笑)
原:それでもこういう起業意欲のある学生さんを応援したい、という想いで続けられているんですね。
浜中:実はmoctecoで今やっている起業支援の仕組みは、僕が学生の頃にこういう仕組みがあったらいいなと思って、起業当初からやりたいと考えていたものなんです。
でもやっぱり起業したての頃はちょっと力が足りなくて実現できず、エンブリッジの事業としては一旦インターシップに集中することに決めました。
それから10年間ずっと、いつかやりたいなぁという想いが変わらなかったので、4年前に準備が整ったみたいな感じでスタートした事業なんです。
原:そんなに前からあたためていらっしゃった企画なんですね。
浜中:資金的には『mocteco応援団』という寄付もいただきながら運用してます。
これまで高校生2名と大学生30名がエントリーし、4名(3社)が起業した、創業支援プログラムmoctecoメンバー応援コミ…
原:では、moctecoに関しては、この寄付金が唯一の収入源っていう感じなんですね。
浜中:そうなっていますすね。
原:ここまですでに4期(4年) 開催されているということで、当面はこのまま継続される予定でしょうか。
浜中:少なくとも、最低でも「10年」はやる、っていうのは決めています!
原:本当に、素晴らしい取り組みですよね。例年はどのくらいの応募があるのでしょうか。
浜中:そこまで多くはないですよ。去年で30チームくらいの応募があり、そこから15チームが合格、っていう感じだと思います。
原:もっとたくさんの学生さんに、知っていただきたいですよね!いや、あまり応募がきすぎても困るのかな?!(笑)
浜中:ははは。思いがあってそれが実現されることなく就職活動に消えていってしまうのはもったいないと思っているので、できるだけいろんな人に知ってもらいたいなと思ってます。
原:学生をしながら参加できるんですもんね、リスクゼロで…これは参加しないともったいないですね。
今後のmoctecoの展開について
原:今後なにか考えられている展開などはありますか。
浜中:今後は、まずはコーディネーターを増やそうとしています。受け入れる人数を広げていくためには、コーディネーターが足りないんですよね。応募者ひとりひとりに、マンツーマンでコーディネーターがつくんです。いろんな分野のコーディネーターがいると、学生にも幅広くサポートできますし。
原:手厚いサポートですね。コーディネーターさんは具体的にどういったことをしてくださるのでしょうか。
浜中:創業の相談に乗ったり、途中で詰まったときの壁打ち相手になったり、アドバイスやディスカッションをする相手になります。
原:メンター的な存在にもなりますね。
浜中:そういうことができる人を増やしていきたいなと思っています。
原:コーディネーターの方は、エンブリッジさんのスタッフの方なのでしょうか。
浜中:いえ違います。ご自身で事業を持っている方や、事業経験者が多いです。学校の先生もいたりしますけど。
原:となると、皆さんはボランティアで参加されてるんですか。
浜中:一応謝金はお出ししていますがわずかばかりなので、ほぼボランティアに近いですね。かけていただく時間に対しては本当に少なすぎて…もっとお支払いしたいとは思っているんですけどね、っていう感じです。
原:3ヶ月間みっちり、マンツーマンで起業のサポートをするんですものね。
浜中:ひとりで複数の子をサポートする人もいますしね。
原:コーディネーターさんたちもすごいですね。いまは何名くらいいらっしゃるんですか。
浜中:去年が5人で、今年は今8人まで増えています。
原:コーディネーターの方も、moctecoの新しい期とともに募集しているんですか?
浜中:今のところは募集とかではなく、直接お声がけをしていますね。
コーディネーターさん同士の得意分野や事業分野が偏らないようにとか、あとは「学生の話を聞ける人」って意外と少ないんですよ。
起業支援とはいえ、学生の恋愛相談から大学生活の相談とかまで乗らなくちゃいけないときもあるので(笑)
そういったことも対応できそうだなーという方を見つけては、声をかけている感じですね。
原:ではコーディネーターに関しては、浜中さんからラブコールが届いたらぜひ協力してください、ってことですね!
浜中:はい、よろしくおねがいします!
そんなわけで、moctecoが将来的に目指しているところは、応募される方とコーディネーターさんがどんどん増えて、広がっていくっていうのを理想としています。
起業支援の輪を全道179市町村に広げたい!
原:次にエンブリッジさん全体としての今後の展望や、こういったことをやっていきたいなとかっていうのがありましたら教えてください。
浜中:インターンシップ事業の方も、やっぱりコーディネーターを増やしていきたいなと思っています。
札幌だけじゃなくて、北海道各地域で起業支援ができる人達を増やして、全道179市町村、どの地域でも起業相談を気軽にできる人がいるようにしたいんです。
たまに「○○町出身で、戻りたいけど仕事もきっかけもなくて。」みたいな相談を受けることもあるんですよね。そんなときに、その地域に起業支援コーディネーターがいれば、その人に相談してその地域の現状を知ったり、人を繋いでもらったり。
「自分で何かやりたいんだったらサポートしてくれるよ」→「あ、じゃあ戻れます」みたいになれば、首都圏からのUターン・Iターンや、札幌から地域へ、といった人の流れももっと増えるかもしれない。
本当にどこにいてもチャレンジできるような環境を作っていきたいなって思って、だからコーディネーターを増やしていくのがひとつの目標かな。
原:インターンシップのコーディネートに限らず、起業支援ができる地域のコーディネーターさんということですね。
浜中:あとはmoctecoの卒業生たちも、そういったコーディネーターになってくれたらいいなと思っています。後輩たちが先輩の背中を見ながら成長し、卒業生がまた次の世代を育成していく、みたいな循環をつくっていけるといいなと思っています。
「あなたの考えにはすごく価値がある」ということを伝えていきたい
原:では最後に、北海道で起業を目指す方へのメッセージをお願いします。
浜中:「あなたが気になっていることや考えていることには、すごく価値があるんですよ」ってことを、声を大にして伝えていきたいと思っています。
原:ということは、普段接する起業志望の学生さんたちは、その辺の自信をあまり持っていないとか?
浜中:はい、意外かもしれませんがmoctecoに来る子たちは、起業するぞー!ってやる気満々って感じの人たちばかりではないんですよ。
原:確かに意外です!「絶対これで成功したい!」みたいな血気盛んな感じの方が多いのかと(笑)
浜中:学生に限らず、社会人も同じだと思うんですけど、なんかすっごく気になるなぁとか、なんか好きだなぁ、っていうことをみんな何かしら持ってると思うんですよ。
それって、自分の中だけに留めているとその良さは誰にも分からないんですけど、やっぱりそれが自分の外に出てかたちになるとすごく価値がある、ということは多くて。
その。もやもやっとしたものを形にしてみる面白さとか、外に伝えてみる面白さみたいなのを、一緒に分かちあえるといいなと思っております。
原:学生さんの場合は、moctecoをそういうきっかけとして使って欲しいって言うことですね。
浜中:そうですね、自分の中だけに眠らせておかないでください、って思います。
特に今の時代は、自分が考えたサービスや商品を必要とする人がもし身近にいなくても、日本全国、世界まで目を向ければどこかに求めている人は居て、その人に届けたりつながったりもしやすくなっています。
本当に小さいきっかけが仕事になるっていうのが、たくさん生まれる社会だと思うので。
で、北海道っていう面で言うとやっぱりまだ眠っているものがたくさんあるから、そういうものをうまく活用しながら北海道らしいプロジェクトがたくさん立ち上がっていくといいですね。
原:そうですね。moctecoに応募される方で北海道の学生さんと都会の学生さんで、スキルなどに違いがあったりはしますか。
浜中:そこはそんなに違いはないですね。
原:では北海道にいても、地方にいても、全然できるよっていうことですね。
浜中:ハイ、本当にどこにいてもできると思います。
なんか元気な人だけがやってるってわけじゃなくて、人とコミュニケーションをとるのは苦手なんですけどでもこれに関してはめっちゃ好きなんです、みたいな子や、色々と抱えて悩んでいる子たちも結構くるんですよ。なんかそういう溜め込んでいる子ほど、挑戦してみてほしいなぁと思ったりもします。
原:密かに胸に熱いものを持っている方も、moctecoのプログラムに参加することで新たな道が開けるということですよね。一歩勇気を出して参加して欲しいですね。
浜中:ぜひそういうものを、外に出していこう!っていうことですよね。
原:これからもmoctecoの取り組みなどに関しては「ロカプレ!」でご紹介させてください。本日はお忙しいところありがとうございました。
浜中:ありがとうございました!
ちょっとでも起業に意欲のある学生さんは迷わず挑戦を!
創業支援プログラムmocteco(モクテコ)では、これまで高校生2名と大学生51名がエントリーし、8名(6社)が起業し、若き経営者としてご活躍中とのことです。
将来起業することに関心があり、起業に挑戦したいと考えている学生の皆さん(高校生、高専生、大学生、大学院生)にとっては、この上なく魅力的なプログラムだと感じました。
応募後に必ず行われるコーディネーターさんとのメンタリングだけでも相当に価値があると思いますので、少しでも関心のある方はぜひ挑戦してみて欲しいですね!
取材協力
特定非営利活動法人北海道エンブリッジ 代表理事 浜中裕之さん
住所:北海道札幌市中央区南1条西6丁目20-1ジョブキタビル8階
電話番号:011-676-5338
http://en-bridge.org/
若年層向け創業サポートプログラム mocteco【モクテコ】
http://mocteco.org/Facebook:https://www.facebook.com/mocteco/
Twitter : https://twitter.com/mocteco
北海道の「インターン」と「はたらく」 しごとはじめ
http://shigoto-hajime.com/