起業をした方やこれから起業を考える方が、最初に悩むことの1つが「集客」ではないでしょうか。安定した売上を上げるためにはお客さんがいなければ始まりません。
そんな起業1年目の集客について、先輩経営者の実例をご紹介します。
今回お話をお伺いしたのは、株式会社Jewelry・Belle(ジュエリーベル)代表の松橋さん。
元看護師の経験とスキルを活かして、2020年に訪問看護事業「ここあい訪問看護ステーション」等を立ち上げ、営業ゼロで安定的に顧客が増えているそうです。
コロナ禍で在宅医療のニーズが増え、訪問看護業界は急成長!そのチャンスを狙い、業界には新規参入企業が続々と… しかし一方で同じくらい潰れてしまう会社も多いそう。
熾烈な競争が続く市場環境の中、安定的にお客さんを増やし続けている秘訣についてお伺いしました。
(取材日:2022年8月・インタビュー:原くみこ・文:中尾唯)
集客に困っている方必見!
株式会社Jewelry・Belle 代表 松橋 沙江子(まつはし さえこ)
立ち上げから半年間はお客さんがほぼゼロ
原:今回は「集客」をテーマにお話をお伺いさせてください。いま主事業として行われている訪問看護事業に関して、創業当時の集客状況ってどんな感じでしたか?
松橋:実は、立ち上げから半年間はお客さんがほぼゼロだったんですよ。
原:半年ですか!
松橋:そうなんです。私たちは、お客さんのお家にお邪魔して看護サービスを提供します。全く知らない人に家族を頼めるかと言われると、なかなか難しいですよね。なので、信頼してもらうのに時間がかかりました。
原:確かに、命に関わることなのでどこに頼むかは慎重になりますね。そこから現在はどのような状況ですか?
松橋:今は1年かけて、約80名の方に利用してもらえるようになりました。この1年はかなり大変でした…(笑)。
集客するために努力していること
原:ほぼゼロからスタートして順調に顧客数を伸ばしてこられた、その秘訣は何だと思いますか?
松橋:1つは、他の訪問看護会社とは圧倒的に違うサービスを提供しています。内容については、企業秘密です。
原:それはサービスを受けられて初めてわかるものなんですね。
松橋:そうですね。周りからも「他では聞いたことがない」と言われることを、この1年続けてきました。
もう1つは、スタッフ全員へ会社の理念を浸透させることです。
原:理念ですか?理念が集客に直結するイメージって、あまり湧かない方が多いかなと思うのですが。
松橋:そうですね、わたしはこんな風に考えました。
まずサービスを受けた方の満足度が高ければ、良い評判は自然と広まります。そのためには良いサービスを提供する必要があり、全スタッフに「お客さまの想いの一歩先」を考えて行動してもらうことでそれを実現したい。
そういった流れで、スタッフみんなが同じ方向を目指すためには、理念の浸透が大事だと。
原:なるほど、そこにつながっているんですね!どんな理念なんですか?
松橋:掲げている理念は「ここにある愛情を全ての人に」です。
原:ということは、「ここあい訪問看護ステーション」の「ここあい」は、その理念からきているんですね。
会社の理念を全スタッフへ浸透させるための方法
原:企業理念やビジョンなどは社内に浸透させるのが難しい、という声をよく聞きます。どうやって理念を浸透させていったのでしょうか?
松橋:まずは言いまくります(笑)。
原:どういうタイミングで言いまくってるんですか?顔を合わせるたびに?
松橋:実はうちのスタッフが集まるのは月に1回しかないんです。コロナもあり、直行直帰システムをとっています。だから直接顔を見て言うわけではないのですが…
原:そんな中でどうやって理念を浸透させていくんですか?!
松橋:それ、いつも聞かれます(笑)仕事でのコミュニケーションにチャットを活用しているので、そこで常にわたしの想いを伝えています。
原:チャットでですか!?
松橋:そうです。私たちは、仕事中は常にチャットの中で会話しています。内容は、薬の確認やお客さんの様子などについてです。仕事中は、全スタッフ必ずすべてに目を通し返信することを徹底しています。その中で、私の想いを添えて伝えるようにしています。
原:具体的にはどのようにですか?
松橋:「その想いが大切なんだよ」「そのもう一歩先にはどんな行動ができる?」など理念に基づいた声かけをしています。それをずっと続けていると、みんなが考えて行動してくれるようになりました。
原:「理念に基づいた声かけ」がポイントですね。文字では気持ちを伝えるのが難しいと感じる方も多いですが、そういった工夫をするとチャットでもきちんとコミュニケーションがとれるんですね。
松橋:そうですね。あとは、定期的にスタッフみんなでご飯に行くのも大切です(笑)。
安心して働ける環境づくり
原:全スタッフがお客さんを想って行動できるというのは、なかなかできないことですよね。
松橋:そうですね。あとは、スタッフ1人1人への声かけや精神的サポートにも気を遣っています。何か失敗しても責めません。
原:普通だと失敗したら怒られると考えてしまいますよね。
松橋:私は「ごめんなさい」ではなくて、「じゃあどうするか」を考えてくれればそれでいいと必ず伝えるようにしています。その先を考えてほしいんです。
原:怒られるかもという目先の心配をすることなく、一貫した理念に基づき安心して成長できる環境を整えているんですね。
口コミで来たお客さまへは「できない」は絶対言わない
原:今、お客さまがどんどん増えているとお伺いしました。どういった流れで増えているのでしょうか?
松橋:利用してくれているお客さんや病院からの紹介がほとんどです。集客したことが一度もないんです。
原:口コミで広がっているのですね!関連して、何か工夫している点はありますか?
松橋:紹介で来てくださったお客さまのご要望には、少し難しいことでも「できない」とは言いません。必ず「何とかしますね」と対応するようにしています。
原:なるほど。少し難しいことにも挑戦し続けることで、高い満足度を実現し、それが新たな実績につながっているんですね。
松橋:そうですね。ありがたいことに。
原:集客に苦労したことはないんですか?
松橋:ないですね。お客さまの募集をストップしたくらい増えていっています。
原:それはすごい!勢いが止まりませんね!
集客=広告ではないということ
集客となると「どう広告を出す?」など外への発信ばかり考えてしまいそうになりますが、本当に大切なのはサービスへの満足度なのだとハッと気付かされました。
スタッフ1人1人へ向き合い想いを伝え続けることは、地道だけどとても大切なことですね。
松橋さんのスタッフやお客さまに対する愛溢れる姿がとても印象的でした。まわりにいる人たちの気持ちを第一に考え行動していくことで、愛される会社となり、集客にもつながっていくのですね。
取材協力
株式会社Jewelry・Belle 代表 松橋 沙江子(まつはし さえこ)
住所:〒065-0028 札幌市東区北28条東9丁目3-3 ポラリスビル
電話番号:011-211-4296
HP: http://j-b-co.com/
Instagram: cocoai_jewelry_belle