今回は、北海道札幌市での起業を強力にサポートしてくれる補助金についてご紹介します。
2024年6月現在提供されている2つの創業支援事業を活用することで、なんと、実質無料で法人設立が可能です。
創業期に使える補助金や助成自体は、全国の自治体でさまざまなものが用意されていますが、法人化が実質無料になるほどのものというのは非常に珍しく、札幌市の創業支援への熱量の高さを感じます!
条件にあてはまれば『法人成り』の際にも適用されますので、現在個人事業主やフリーランスの方も必見です。
それでは早速見ていきましょう。
(文:原くみこ)
法人設立時にかかる費用ってどのくらい?
本題に入る前に、そもそも株式会社や合同会社といった『法人』を設立する際に、いくらくらいの費用がかかるかご存知ですか?
最低限必要な費用は、主に4種類あります。
- 法定費用
- 資本金
- その他諸費用(会社の印鑑作成、各種証明書)
- 司法書士など専門家への相談・依頼報酬費用
中でも絶対に発生する金額として最も大きいのが、「1.法定費用」です。
法定費用は、法人登記の手続きの際にかかる法令で定められた費用で、株式会社、合同会社など、選択する会社形態によって異なります。
▼法定費用:最安のパターン
※資本金100万円未満、電子定款、すべて自分で手続した場合
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款認証 | 32,000円〜 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円〜 | 60,000円〜 |
その他費用 (印鑑作成、各種証明取得) |
10,000円〜 | 10,000円〜 |
合計 | 約192,000円〜 | 約60,000円〜 |
加えて、定款の作成や登記の手続きを専門家に依頼する際には、「4.司法書士など専門家への相談・依頼報酬費用」として5万円〜程度がかかります。
つまり、一般的な株式会社の設立費用は、最低でも25万円程度+資本金 が目安となっています。
なお「2.資本金」は最低資本要件が決められているいくつかの業種(※)以外では、最低1円からでもOKです。(※有料職業紹介事業 :500万円以上、旅行業:3,000万円以上など)
- 設立費用の詳細:電子定款の場合に発生する費用の内訳
-
項目 株式会社 合同会社 定款用収入印紙代
※電子定款では不要0円 0円 定款の謄本手数料 約900円 ※1件700円+(定款のページ数+1)×20円
0円 定款の認証手数料 資本金100万円未満:30,000円
資本金100万円以上300万円未満:40,000円
資本金300万円以上:50,000円0円 電磁的記録の保存手数料
※電子定款の場合のみ300円 0円 登録免許税 150,000円
または
資本金額 × 0.7%
どちらか高いほう60,000円
または
資本金額 × 0.7%
どちらか高いほう合計 約181,200円〜 約60,000円〜 ▼参考
・公証役場の定款認証手数料について:日本公証人連合会 https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow09_4/9_4_q03
・登録免許税の税額表:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 設立費用の詳細:紙の定款の場合に発生する費用の内訳
-
項目 株式会社 合同会社 定款用収入印紙代 40,000円 40,000円 定款の謄本手数料 約2,000円
※(定款のページ数+1枚)×250円0円 定款の認証手数料 資本金100万円未満:30,000円
資本金100万円以上300万円未満:40,000円
資本金300万円以上:50,000円0円 登録免許税 150,000円
または
資本金額 × 0.7%
どちらか高い方60,000円
または
資本金額 × 0.7%
どちらか高い方合計 約222,000円〜 約100,000円〜 ▼参考
・公証役場の定款認証手数料について:日本公証人連合会 https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow09_4/9_4_q03
・登録免許税の税額表:国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
これが、札幌市の2つの創業支援策を活用することで、
株式会社の場合で 合計25万円相当
合同会社の場合で 合計11万円相当
の優遇・補助金を受けることができ、場合によっては法人設立手続きにかかる費用以上の金額をもらえることになります。
札幌で法人設立を考えているなら、使わない手はありませんね!
対象の2つの創業支援策
実質無料、を実現するには次の2つの支援策を受ける必要があります。
1)札幌市の特定創業支援等事業
https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/plaza.html
これを受けると…登記時の登録免許税が軽減
資本金の 0.7% ⇒ 0.35%に
※ 最低税額の場合:15万円⇒7.5万円に
資本金の 0.7% ⇒ 0.35%に
※ 最低税額の場合: 6万円⇒3万円に
1件につき 6万円 ⇒ 3万円に
2)さっぽろ新規創業促進補助金
https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/sinkisougyouhojyo.html
これを受けると…後日、
こちらは札幌市が2022年度から独自に行っている創業支援策です。今のところ2024年度いっぱい(令和6年4月1日~令和7年3月31日)が対象期間となっていますが、それ以降も延長になるかは毎年見直しが行われています。
利用を検討する場合は、期間にも注意しましょう。
対象者と支給要件
『さっぽろ新規創業促進補助金』は、新規創業者を支援するために札幌市が提供する補助金なので、『初めて法人の代表になる人』が対象です。
個人事業主が法人成りする際も適用可能ですが、開業届けの提出から5年以内であることが条件です。
具体的には、以下の条件すべてに当てはまる必要があります。
- 事業を営んでいない個人又は、開業届の提出から5年を経過していない個人事業主であること
- 札幌市より特定創業支援等事業の証明を受けた後、登録免許税を支払っていること
- 札幌市内に登記上の本店所在地を置いていること
- 新たに設立した会社以外に、代表権を持つ会社がないこと。もしくは他の事業を営んでいないこと。(個人事業については、廃業届を提出済であることが必要※)
※個人事業主が『法人成り』する場合、法人化と同時に個人事業は廃業となるため、本補助金の対象になるそうです。
実質無料で法人設立を行う5つのステップ
2種類の補助金を確実に受け取るには、必ず先に「札幌市の特定創業支援等の事業」を修了し、その証明を受けてから法人登記を行う必要がある点に注意してください。
1. 札幌市のいずれかの「特定創業支援等事業」を受ける
2. 「特定創業支援等事業」を修了する
3. 「特定創業支援等事業」を修了した証明書を申請し、発行を受ける(@札幌市役所)
4. 法人登記を行う(@法務局 または オンライン申請)
※登記の登録免許税の支払い時に2の証明書の提示が必要
5. 「さっぽろ新規創業促進補助金」を申請する(郵送)
札幌市の「特定創業支援等事業」とは?
札幌市では、市内における創業の促進を目的としてさまざまな機関で、創業支援を行っています。窓口相談の多くは利用料無料ですので、法人化に限らず、起業・創業に関する疑問や悩みを気軽に相談することができます。
起業セミナーは開催期間が決まっているため、タイミングが合わない場合は、まず窓口相談を利用すると良いでしょう。
なお「特定創業支援等事業の修了証明」を発行してもらうための要件は、窓口ごとに異なりますので、以下の詳細ページにあるパンフレットで、それぞれの事業内容を確認してください。
詳しくは以下をチェック!
▼札幌市創業支援等事業計画
https://www.city.sapporo.jp/keizai/center/plaza.html
また、特定創業支援事業を受けた人向けの特典は、会社設立時の登録免許税の軽減だけではありません。
- 信用保証協会の創業関連保証の特例
- 日本政策金融公庫の新規開業支援資金の特例
- 「小規模事業者持続化補助金」の<創業枠>申請対象要件(補助金限度額の増額)
など、資金面での優遇も多数あります。
創業資金の調達を検討している場合は、それらの情報も合わせてチェックしましょう。
特定創業支援等事業、おすすめの相談窓口はコレ
支援窓口が多いため、どこに相談しよう?と迷った場合は、「さっぽろ創業支援プラザ」の相談窓口がおすすめです。創業のアイデア段階から、融資等の相談まで、幅広く支援していただけます。
オンラインミーティングへの対応や、女性起業家向けの相談窓口もあり、子育て中の方や会社勤めをしながら創業準備をする方にとっても、利用しやすい印象です。
創業支援事業の一例
さっぽろ創業支援プラザ【相談窓口】
札幌中小企業支援センター
https://chusho.center.sec.or.jp/establish/consultation-3/
創業予定の方や創業まもない方のための総合相談窓口です。…
スタートアップ相談窓口
STARTUP HOKKAIDO実行委員会
https://startuphokkaido.com/consulting/
女性のためのコワーキングスペース リラコワ
女性起業家のゼロ→イチ相談におすすめ【相談窓口】
https://sapporo-telework.jp/hotel_work/_cw_lilaco.php
【セミナー】さっぽろ起業道場
さっぽろ産業振興財団
年に1-2回、起業セミナーを開催
https://seminar.sapporosansin.jp/seminar/1813/
【セミナー】創業セミナー・イベント情報
北海道地域経済局中小企業課
・不定期に開催される起業セミナーの情報を掲載
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/csk/a0006/b0002/
窓口相談を受ける場合の注意
4回以上の相談が必須!
窓口相談にて特定創業支援等事業による支援を受ける場合には、1か月以上にわたり継続的に4回以上の相談を受ける必要があります。
例えば、「来週、法人登記したいから証明書発行してください!」というのはNGです。
補助金を利用したいことを伝える
各窓口はあくまでも創業相談の窓口であり、補助金の窓口ではありません。
初回相談時に「特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明が欲しい」旨をお伝えすると、その後の流れがスムーズです。
札幌市の創業支援を利用して無料で法人化してみた!体験談
実は、本記事を執筆している私自身が、今回ご紹介した札幌市の2つの補助金を利用して、2024年2月に法人化しました!
申請時には、この補助金が2024年度も継続されるのか不透明であったことから、2023年度中にと思い、2023年12月から法人化に向けた準備を開始しました。
私の場合は個人事業主からの法人成りということや、年度末の申請期限が迫っており、年度中の創業セミナーの予定がなかったことから、『さっぽろ創業支援プラザ』の窓口相談を利用しました。
『さっぽろ創業支援プラザ』の窓口相談で特定創業支援事業の証明書を発行していただくためには、継続的に4回以上の相談を受ける必要があるため、オンラインミーティング2回、書類の受領・提出を兼ねた直接訪問を2回利用して、支援完了となりました。
正直なところ、4回も相談することあるかな?と思っていたのですが、登記や法人化に関する疑問に対して、過去の起業家さんの具体的な事例を教えていただくなど、毎回とても親身に相談にのっていただき、十分な支援回数でした。窓口相談の最終日には、まるで卒業式を迎えるような、ちょっぴり感慨深い気持ちになりましたよ!
また、『特定創業支援等事業による支援を受けたことの証明書』は札幌市役所で発行してもらうのですが、創業支援プラザは札幌商工会議所の中にあり、ほぼ市役所の隣なので、最終日にそのまま市役所へ行くのがスムーズでした。
なおその足で、市役所から法務局へ行き、その日に法人登記まで済ませる方が多いそうです(わたしは電子申請をしたので、登記は別日にしましたが)。
登記が完了したら、改めて法務局へ『設立した会社に係る履歴事項全部証明書の写し』いわゆる『登記簿謄本』を取りに行き、『さっぽろ新規創業促進補助金』の申請を行います。こちらは郵送でOKです。
これで完了!と思いきや、後日市役所の担当の方からご連絡があり、提出した申請書に記入ミスがあったことが判明…
書類の一部が再提出となりましたが、修正内容は電話で丁寧に教えてくださったので、特に困ることはありませんでした。
その後、無事に補助金が振り込まれ、実質ゼロ円で法人化ができたことに感動!&札幌市に感謝しつつ、法人としての一歩を踏み出したのでした。
ご注意!補助金の交付まで最大約2ヶ月かかります
ちなみに補助金の交付時期は「申請書を提出した月の翌月下旬」となっているため、月初に提出すると、振込まで約2ヶ月かかります。資金繰りに不安がある方はその点ご注意ください。
補助金・助成金は、「書類が大変そう」「審査が難しそう」といったイメージがありましたが、少なくとも今回の補助金に関しては、利用者にとても優しかったです(笑)
新規創業を考えている方にはもちろん、費用面で法人化はまだまだと考えていた方にも魅力的な、札幌市の創業支援事業。これらの支援策も上手に活用して、夢を実現できる人が増えることを願っています。